肩関節周囲炎(五十肩)は、肩関節の周囲に炎症が生じ、痛みや可動域制限を引き起こす疾患です。この病態を拘縮、軸ずれ、可動域、疼痛という観点から解剖学的に説明します。
1. 拘縮
拘縮は、肩関節周囲の筋肉や靭帯が短縮し、可動域が制限される状態を指します。肩関節周囲炎では、以下の要因が関与します:
- 筋肉の緊張: 肩関節を支える筋肉(特に回旋筋腱板や三角筋)が炎症により緊張し、短縮します。この結果、肩の動きが制限され、特に外転や内旋が困難になります。
- 関節包の肥厚: 肩関節の関節包が炎症を起こし、肥厚します。これにより、滑液の分泌が減少し、関節内の滑らかな動きが妨げられ、拘縮が進行します。
- 痛みと運動制限: 痛みがあると、無意識に肩の動きを避けるようになり、筋肉や靭帯がさらに短縮してしまいます。この悪循環が拘縮を悪化させます。
2. 軸ずれ
軸ずれは、肩関節の正常な動きが妨げられ、関節の位置がずれることを指します。肩関節の場合、以下の要因が影響します:
- 関節の構造: 肩関節は非常に可動性が高い関節であり、上腕骨の頭部は関節窩に対して不安定です。炎症や痛みがあると、正常な動きができず、関節が適切に動かなくなります。
- 筋肉の不均衡: 肩関節を支持する筋肉群のバランスが崩れると、上腕骨の位置がずれやすくなります。特に、回旋筋腱板の筋力低下や不均衡が生じることで、肩関節の安定性が失われ、痛みを引き起こします。
3. 可動域
肩関節の可動域は、正常な機能にとって重要です。肩関節周囲炎では、以下のように可動域が制限されます:
- 可動域の測定: 肩関節の正常な可動域は、外転で約180度、内旋で約90度、外旋で約90度ですが、肩関節周囲炎ではこれらの動きが著しく制限されます。
- 拘縮の影響: 拘縮により、筋肉や靭帯が短縮し、関節包が硬化することで、可動域が狭くなります。これにより、日常生活動作(腕を上げる、後ろに手を回すなど)が困難になります。
4. 疼痛
肩関節周囲炎に伴う疼痛は、以下のようなメカニズムによって引き起こされます:
- 炎症: 炎症が生じると、神経終末が刺激され、痛みを感じます。特に、肩関節周囲の滑膜や腱が炎症を起こすことで、疼痛が増強します。
- 筋肉の緊張: 痛みがあると、筋肉が緊張し、さらに痛みを引き起こすという悪循環が生じます。このため、痛みを避けるために動かさないことが、可動域の制限を悪化させます。
- 神経の影響: 肩関節周囲の神経(例:肩甲上神経、腋窩神経)が炎症により圧迫されることも、疼痛の原因となります。
まとめ
肩関節周囲炎は、拘縮、軸ずれ、可動域制限、疼痛が相互に影響し合う複雑な病態です。これらの理解を基に、適切な治療やリハビリテーションが重要です。炎症の管理、筋力の強化、柔軟性の改善を通じて、痛みを軽減し、可動域を回復させることが求められます。
四十肩五十肩ならボディケアグリーンズ 森田