叱る指導:短期的な効果と長期的な弊害

スポーツ指導において、叱る指導は、古くから用いられてきた手法の一つです。しかし、近年、その有効性と弊害について、様々な議論がなされています。

叱る指導の短期的なメリット

  • 行動の修正: 指導者が設定した基準に達しない場合、叱責することで、選手の行動を短期間で修正できる可能性があります。
  • 規律の遵守: 叱られることを恐れる心理から、選手は規律を守り、チームの一員としての責任を果たそうとする可能性があります。
  • 集中力向上: 叱責によって緊張感が高まり、一時的に集中力が高まることがあります。

叱る指導の長期的なデメリット

  • 主体性の喪失: 叱られることを避けるために行動するようになると、選手は「なぜその行動が必要なのか」を考えることをやめ、指示待ち人間になってしまう可能性があります。
  • 創造性の阻害: 失敗を恐れるあまり、新しいことに挑戦することを避け、創造性を発揮できなくなる可能性があります。
  • モチベーションの低下: 叱責によって、スポーツに対する楽しさや興味を失い、モチベーションが低下する可能性があります。
  • 自信の喪失: 叱責は、選手の自己肯定感を傷つけ、自信を失わせる可能性があります。
  • 精神的なストレス: 継続的な叱責は、選手に精神的なストレスを与え、不安や恐怖心を引き起こす可能性があります。
  • 人間関係の悪化: 指導者と選手間の信頼関係が崩れ、コミュニケーション不足に陥る可能性があります。
  • 燃え尽き症候群: 過度なプレッシャーやストレスから、燃え尽き症候群に陥るリスクが高まります。

叱る指導の問題点

叱る指導は、選手の外発的動機づけに依存した指導法です。外発的動機づけとは、報酬や罰など、外部からの刺激によって行動を促すものです。一方、スポーツを継続的に楽しむためには、内発的動機づけ、すなわち、スポーツそのものへの興味や楽しさ、達成感などが重要になります。

叱る指導は、短期的には効果があるように見えるかもしれませんが、長期的には、選手の主体性や内発的動機づけを阻害し、スポーツに対するネガティブな感情を植え付ける可能性があります。

指導における代替案

  • ポジティブフィードバック: 良いプレーを褒める、努力を認めるなど、ポジティブなフィードバックを積極的に行うことで、選手のモチベーションを高め、自信をつけさせることができます。
  • 目標設定: 選手自身が目標を設定し、それに向かって努力することで、主体性や達成感を育むことができます。
  • コミュニケーション: 指導者と選手が相互に理解し、信頼関係を築くことが重要です。
  • 個別指導: 選手一人ひとりの個性や能力を理解し、それに合わせた指導を行うことで、選手の成長を促すことができます。

まとめ

叱る指導は、短期的な効果がある一方で、長期的な視点で見ると、選手を弱体化させる可能性があります。指導者は、選手の主体性や内発的動機づけを育むことを念頭に置き、ポジティブなフィードバックやコミュニケーションを重視した指導を行うことが重要です。

スポーツは、本来、楽しむべきものです。指導者は、選手がスポーツを楽しみ、その中で成長できるような環境を提供する必要があります。

コメントを残す

Related Post

筋トレにおける怪我の予防筋トレにおける怪我の予防

​​​​​​​ 高強度な筋力トレーニングは、効率的に筋肥大や筋力向上を促す一方で、身体への負担も大きいため、怪我のリスクが伴います。安全にトレーニング効果を得るためには、高重量を扱う際に特に注意すべき点があります。それは […]

胃が痛くなるような、、、胃が痛くなるような、、、

ほとんどチャンスと言えるチャンスもなく 逆にピンチの連続 我がチームの得点源がほぼ全滅 エースの調子も決して良くない それでもなぜだかリードは続く いつ逆転されるか いつひっくり返されるかとヒヤヒヤしながらずっと観ていた […]

本当に終わってしまった本当に終わってしまった

<甲子園>日本文理6-10関東一(試合終了)文 理 101 300 100 =6関東一 004 201 21 × =10→日本文理は初戦突破ならず(バッテリー)文 理:南、長谷川-佐藤関東一:土屋、谷-野口 もし日本文理 […]

2025箱根駅伝を応援しています!2025箱根駅伝を応援しています!

今日と明日は、毎年恒例の箱根駅伝ですね!青山学院大学、國學院大学、駒澤大学と実力伯仲のチームが揃い、そのほかのチームも含めてデッドヒートになる可能性は大いにありますね! 長距離を楽に走るためには、肩甲骨を意識した動きが重 […]

スクワットで得られる多くの効果スクワットで得られる多くの効果

現代社会における座りすぎは、私たちの健康に深刻な影響を与える可能性があります。椅子に座る生活が一般的になったことで、身体を動かす機会が減り、股関節や足首の柔軟性が失われがちです。その結果、膝、腰、背中の痛み、さらには消化 […]