高強度な筋力トレーニングは、効率的に筋肥大や筋力向上を促す一方で、身体への負担も大きいため、怪我のリスクが伴います。安全にトレーニング効果を得るためには、高重量を扱う際に特に注意すべき点があります。それは、動作の質、滑らかさ、バランス、安定感といった要素を徹底的に追求することです。
トレーニング強度を理解する
トレーニング強度には、外的強度と内的強度があります。 外的強度とは、何をどれくらい行っているかを示す指標で、走行距離や挙上重量、スプリント回数などが該当します。一方、内的強度とは、本人にとってどれくらいきついと感じるかを示す指標で、心拍数などが該当します。
トレーニング強度を主観的に把握することで、無理をしすぎるのを避け、怪我のリスクを抑えることができます。 内的強度を把握するための簡便な方法として、RPE(トレーニングのきつさを「0[休息]」から「10[最大限にきつい]」まで主観的に評価した数値)と運動時間を乗算した「セッションRPE(sRPE)」があります。 例えば、RPEが「5[きつい]」の運動を30分行った場合、そのセッションのsRPEは5×30=150となります。
怪我を防ぐための具体的な対策
トレーニングの実施
1. 正しいフォームの習得
高重量を扱う前に、まず正しいフォームを習得することが重要です。筋トレでは、ターゲットとする筋肉に適切な負荷をかけるために、正しい姿勢と動作が求められます。フォームが崩れると、関節や靭帯に過剰な負担がかかり、怪我のリスクが高まります。
正しいフォームを習得するためには、以下の方法が有効です。
- 信頼できる情報源から学ぶ: 専門書や信頼できるウェブサイト、動画などを参考に、正しいフォームを理解しましょう。
- トレーナーに指導を受ける: 可能であれば、パーソナルトレーナーや経験豊富な指導者にフォームをチェックしてもらい、アドバイスを受けるのが最適です。
- 鏡でフォームを確認する: トレーニング中は鏡で自分のフォームを確認し、修正しながら行いましょう。
- 軽い重量から始める: 最初は軽い重量でフォームを固め、徐々に重量を上げていくようにしましょう。
2. 適切な負荷設定
高重量を扱うことは筋力向上に効果的ですが、自身の体力レベルを超えた負荷は怪我のリスクを高めます。
- 段階的に負荷を上げる: 無理せず、徐々に負荷を上げていくようにしましょう。 元のトレーニング強度から、5%減から10%増の範囲で徐々に変えることで怪我のリスクを減らすことができます。 15%以上上げてしまうと、怪我のリスクが大きく増えるという研究結果もあります。
- 疲労時は負荷を下げる: 疲労が蓄積している場合は、負荷を下げてトレーニングを行いましょう。
- 自分の限界を知る: 無理をして限界を超えた重量に挑戦することは避けましょう。
ウォーミングアップとクールダウン
トレーニング前後のウォーミングアップとクールダウンも怪我予防に不可欠です。
ウォーミングアップ
- 軽い有酸素運動で体を温め、心拍数を上げます。
- 動的ストレッチで筋肉や関節の柔軟性を高めます。
- トレーニングで使用する種目を軽い負荷で数回行い、体を慣らします。
- ゴムバンドを使った補助運動も効果的です。
クールダウン
- 静的ストレッチで筋肉の緊張を和らげ、疲労回復を促します。
- 軽い有酸素運動で血行を促進し、老廃物の排出を促します。
姿勢のリセット
日常生活でのデスクワークなどによる悪姿勢は、トレーニング時のフォームに悪影響を及ぼし、怪我のリスクを高める可能性があります。 トレーニング前にフォームローラーなどを使い、姿勢をリセットすることで、正しいフォームをとりやすくなるでしょう。
ウォーミングアップとクールダウンを行うことで、筋肉や関節の柔軟性が高まり、怪我のリスクを軽減できます。
休息と回復
筋肉はトレーニングによって損傷し、休息と栄養補給によって回復・成長します。十分な休息をとらずにトレーニングを続けると、疲労が蓄積し、怪我のリスクが高まります。
- トレーニング頻度: 同じ部位の筋肉を連続してトレーニングすることは避け、適切な休息日を設けましょう。
- 睡眠: 睡眠は筋肉の回復に重要です。毎日7~8時間程度の睡眠を確保しましょう。
- 栄養: 筋肉の修復と成長に必要な栄養素を摂取しましょう。特にタンパク質は重要です。
集中力と精神状態
トレーニング中は、常に集中力を維持し、自分の身体と向き合いましょう。
- 集中力を欠いた状態でのトレーニング: 集中力が欠けていると、フォームが崩れやすくなり、怪我のリスクが高まります。 精神的なプレッシャーや、周囲の音など、様々な要因によって集中力は途切れてしまう可能性があります。
- 精神的なプレッシャー: 過度なプレッシャーを感じている場合は、トレーニングを中断しましょう。
- ポジティブな思考: 「壊れるのは自分が悪い」という思考ではなく、「怪我をしないように注意深くトレーニングを行う」という意識を持つことが大切です。
トレーニング環境
トレーニングを行う環境も怪我予防に影響します。
- 安全な環境: 周りに危険なものがなく、十分なスペースが確保されている場所でトレーニングを行いましょう。
- 適切な装備: トレーニング内容に適した服装やシューズを着用しましょう。 必要に応じて、リストラップやベルトなどの補助具を使用することも有効です。
- 温度と湿度: 暑すぎたり寒すぎたりする環境は、パフォーマンスの低下や怪我のリスクを高める可能性があります。適切な温度と湿度が保たれた場所でトレーニングを行いましょう。
特に注意が必要な種目
一部の種目は、他の種目よりも怪我のリスクが高い場合があります。
- ベンチプレス: 肩関節に大きな負担がかかるため、フォームが崩れると肩を痛めやすいです。
- バックスクワット: 腰や膝に大きな負担がかかるため、フォームが崩れると腰痛や膝痛を引き起こす可能性があります。
- アームカール: 高重量を扱うと上腕二頭筋を痛めやすいです。
これらの種目を 行う際は、特に注意して正しいフォームを維持し、適切な負荷設定を行うようにしましょう。
体幹強化の重要性
体幹が弱い状態だと、トレーニング動作が安定せず、怪我のリスクが高まります。 体幹を鍛えることで、軸が強くなり、パフォーマンス向上だけでなく、怪我の予防にもつながります。
体幹トレーニングの例としては、プランクなどがあります。 また、スクワットも、足、尻、太もも、背中といった大きな筋肉を動かし、体幹強化に効果的です。
怪我をしてしまったら
万が一、トレーニング中に怪我をしてしまった場合は、以下の手順で対処しましょう。
- RICE処置: Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)を行い、炎症を抑えましょう。
- 医療機関への受診: 必要に応じて、医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。
- 再発防止: 怪我の原因を分析し、再発防止に努めましょう。
まとめ
高強度な筋力トレーニングは、適切な知識、技術、そして精神的な集中力を持って行うことで、怪我のリスクを最小限に抑え、最大限の効果を得ることが可能となります。
トレーニングの実施、ウォーミングアップとクールダウン、休息と回復、集中力と精神状態、トレーニング環境、そして体幹強化。これら全てを意識することで、怪我を予防し、安全にトレーニングを継続することができます。自身の身体と向き合い、無理のないトレーニングを心がけましょう。
項目 | 詳細 | 例 |
ウォーミングアップ | 軽い有酸素運動 | ランニング、エアロバイク |
動的ストレッチ | アームサークル、レッグスイング | |
ゴムバンド | チューブを使ったストレッチ | |
クールダウン | 静的ストレッチ | 各部位のストレッチ |
負荷設定 | 段階的に負荷を上げる | 前回の重量の5%減〜10%増 |
疲労時は負荷を下げる | 疲労度に合わせて重量を調整 | |
休息 | 同じ部位の筋肉を連続してトレーニングしない | 休息日を設ける |
十分な睡眠 | 毎日7〜8時間 | |
栄養 | タンパク質など、筋肉の修復と成長に必要な栄養素を摂取 | プロテイン、肉、魚 |
集中力 | トレーニング中は常に集中力を維持 | 意識を動作に集中 |
精神状態 | 過度なプレッシャーを感じている場合はトレーニングを中断 | 気分転換などを行う |
環境 | 安全な環境 | 周りに危険なものがないか確認 |
適切な装備 | トレーニングウェア、シューズ | |
リストストラップ、ベルト | ||
適切な温度と湿度 | 快適な温度の場所で | |
体幹強化 | 体幹トレーニング | プランク |
スクワット |
体作り・体使い・姿勢の達人の店ボディケアグリーンズ 森田