1. 手首と指の動きに関わる筋肉の基本
手首や指を曲げる(屈曲)際には、主に前腕の屈筋群という筋肉が収縮します。一方、手首や指を伸ばす(伸展)際には、前腕の伸筋群という筋肉が収縮します。これらの筋肉は、腱という丈夫な線維性の組織を介して手首や指の骨に繋がっており、筋肉の収縮によって関節を動かしています。
2. 屈曲優位の生活習慣と筋肉のアンバランス
日常生活や仕事において、パソコン操作、スマートフォン使用、細かい作業など、手首や指を屈曲させる動作は非常に多く行われます。このような動作を繰り返すことで、屈筋群は頻繁に収縮し、その結果として筋肉が**短縮(縮こまった状態)**しやすくなります。
一方、伸展動作は頻度が少ないので伸筋群を十分に収縮させることなく、加えてストレッチによって伸ばしてしまう。収縮させずに伸ばしてばかりだと、筋肉は**伸長(伸びた状態)**したままになりやすく、筋力も低下する傾向があります。
このように、屈筋群が短縮し、伸筋群が伸長した状態で固まることは、筋肉のバランスが崩れた状態と言えます。
3. 筋肉のアンバランスが腱鞘炎を引き起こすメカニズム
筋肉のバランスが崩れると、以下のようなメカニズムで腱鞘炎などの痛みが生じやすくなります。
- 腱への過剰な負担: 短縮した屈筋群は常に緊張した状態にあり、手首や指を動かすたびに腱に過剰な引っ張る力を加えます。また、伸びた伸筋群は十分に力を発揮できないため、屈筋群の負担を補いきれず、さらに腱への負担が増加します。
- 腱と腱鞘の摩擦: 腱は腱鞘というトンネル状の組織の中を通って骨に付着しています。筋肉のアンバランスによって腱が慢性的に引っ張られたり、腱鞘との間で摩擦が生じたりすると、腱や腱鞘に炎症が起こりやすくなります。これが腱鞘炎です。
- 関節への負担: 筋肉のバランスが悪いと、手首や指の関節にかかる力のバランスも崩れ、特定の部位に過剰な負担がかかることがあります。これも痛みの原因となります。
4. まとめ
手首や指の屈曲動作の多用と、伸展時のストレッチによる伸筋群の伸長は、前腕の屈筋群の短縮と伸筋群の伸長を引き起こし、筋肉のアンバランスを生じさせます。この筋肉のアンバランスは、腱への過剰な負担や腱鞘との摩擦、関節への負担などを引き起こし、腱鞘炎などの手首や指の痛みに繋がる可能性が高いと言えます。
このような状態を改善するためには、意識的に手首や指を伸展させる動作を取り入れたり、前腕の筋肉のストレッチやトレーニングを行ったりすることが重要です。もし痛みが続くようであれば、整形外科や専門の医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。
体使い・体作り・姿勢の達人の店ボディケアグリーンズ 森田