馬や牛といった草食動物は、私たち人間から見ると非常に大きな体格を持ち、力強い動きをします。
彼らが強靭な筋肉を持つ主な理由は、以下の3点に集約できます。
- 捕食者から身を守るため: 野生の世界では、草食動物はライオンやオオカミなどの肉食動物にとっての獲物です。そのため、彼らは常に捕食者から逃げるための瞬発力や、長時間走り続けるための持久力が必要となります。これらの能力を支えるのが、発達した強靭な筋肉なのです。例えば、馬は時速70km近いスピードで走ることができ、これは筋肉の爆発的な力によるものです。
- 広大な テリトリーを移動するため: 草食動物は、食べるための草を探して広い範囲を移動する必要があります。特に、乾燥地帯などでは、水や食料を求めて長距離を移動することも珍しくありません。このような移動を支えるためには、持久力に優れた筋肉が不可欠です。牛なども、広大な牧草地をゆっくりと歩き回りながら草を食べています。
- 自身の体重を支えるため: 草食動物は、多くの場合、私たち人間よりもはるかに大きな体重を持っています。この大きな体重を支え、安定して動き回るためには、骨格だけでなく、それを支える強靭な筋肉が必要となります。特に、首や脚の筋肉は、体重を支える上で重要な役割を果たしています。
草食動物はどうやってタンパク質を生成しているのか?
ここで多くの人が疑問に思うのが、「草しか食べていないのに、なぜあんなに筋肉隆々なのか?」という点でしょう。筋肉の主成分はタンパク質であり、私たちは肉や魚、豆類などからタンパク質を摂取しています。では、草食動物はどのようにして必要なタンパク質を確保しているのでしょうか?その秘密は、彼らの持つ特殊な消化器官と、そこに住む微生物にあります。
草食動物は、人間のような単胃動物とは異なり、複数の胃を持つ反芻動物(牛、羊など)や、巨大な盲腸を持つ動物(馬、ウサギなど)です。これらの特殊な消化器官の中で、以下のプロセスを経てタンパク質が生成されます。
- 微生物による分解と合成: 草に含まれるタンパク質の量は、肉などに比べるとわずかです。しかし、草食動物の消化器官内には、無数の微生物(細菌や原生生物など)が生息しています。これらの微生物は、草に含まれるセルロースなどの難消化性の食物繊維を分解する際に、自身に必要なタンパク質を合成します。
- 微生物の消化吸収: 反芻動物の場合、最初に食べた草は第一胃(ルーメン)という大きな胃に入り、ここで微生物によって発酵されます。その後、一部の消化された草は口に戻され(反芻)、再び咀嚼されます。これを繰り返すことで、食物繊維はさらに細かく分解され、微生物の数も増えます。最終的に、これらの微生物自体が、草食動物にとって重要なタンパク質源となるのです。つまり、草食動物は、直接草に含まれるタンパク質だけでなく、微生物が合成したタンパク質も消化吸収しているのです。
- 必須アミノ酸の生成: タンパク質は、20種類のアミノ酸から構成されています。そのうち、人間を含む多くの動物は、体内で合成できないアミノ酸(必須アミノ酸)を食事から摂取する必要があります。草食動物の消化器官内の微生物は、これらの必須アミノ酸も合成することができます。そのため、草食動物は、草だけを食べていても、体に必要なすべてのアミノ酸を確保することができるのです。
人間との比較
私たち人間は、草食動物のように効率的に植物からタンパク質を生成する能力を持っていません。人間の消化器官は単胃であり、セルロースなどの食物繊維を分解する能力は限られています。また、体内で必須アミノ酸を合成することもできません。そのため、私たちは肉、魚、卵、乳製品、豆類など、タンパク質を豊富に含む食品を直接摂取する必要があります。
しかし、人間も腸内細菌を持っています。私たちの腸内細菌も、食物繊維の一部を分解したり、ビタミンを合成したりする役割を担っていますが、草食動物のように大量のタンパク質を合成する能力はありません。
まとめ
草食動物が強靭な筋肉を持つのは、捕食者から身を守り、広大なテリトリーを移動し、自身の体重を支えるためです。そして、彼らが草だけを食べていながら筋肉に必要なタンパク質を生成できるのは、特殊な消化器官とそこに生息する微生物の働きによるものです。微生物が食物繊維を分解する過程でタンパク質を合成し、その微生物自体が草食動物の栄養源となるという、自然界の驚くべき仕組みがそこには存在します。
人間は、草食動物とは異なる食性と消化システムを持っていますが、それぞれの環境に適応した形で生命活動を維持しているという点で、自然の多様性と巧妙さを感じさせられます。
カラダ使い・カラダ作り・姿勢の達人の店ボディケアグリーンズ 森田